映画『蒸発』予告編(日本劇場公開版)
映画『蒸発』予告編
⽇本の蒸発という現象に迫ったドキュメンタリー。知られざる「夜逃げ屋」の仕事や、失踪者と残された⼈々の⼼の葛藤と和解の道のりを、没入感のある映像で描く。
2026年3月14日(土)よりユーロスペース他、全国順次公開
監督:アンドレアス・ハートマン&森あらた
ドイツ人映画作家アンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点に活動する映像作家・森あらたが共同で監督を務め、日本の「蒸発」という現象を題材に描いたドキュメンタリー。
日本では毎年約8万人が失踪し、そのうち数千人は完全に姿を消してしまう。彼らは「蒸発者」と呼ばれ、その理由は人間関係のトラブルや借金苦、ヤクザからの脅迫などさまざまだ。いわゆる「夜逃げ屋」の支援を受け、すべてのしがらみを捨て別の場所で新しい生活を始める者もいる。深い喪失や挫折と、人生をゼロからやり直す希望が交差する「蒸発」は、これまで多くの文学や映画のモチーフとなってきた。本作では、知られざる「夜逃げ屋」の仕事や、蒸発者と残された人々の心の葛藤と和解の道のりを没入感ある映像で描き、日本特有の社会現象の実態に迫る。
第39回ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀作品賞を受賞するなど、世界各地の映画祭で注目を集めた。
2024年製作/86分/G/ドイツ・日本合作
原題または英題:Johatsu – Die sich in Luft auflösen
配給:アギィ
劇場公開日:2026年3月14日
公式サイト:https://aggie-films.jp/jht/
INTRODUCTION
人はなぜ、ある日突然、社会から姿を消すのか?
逃走と再生をめぐる圧巻のドキュメンタリー
日本では毎年、約8万人が失踪する。その多くはやがて帰宅するが、数千⼈は完全に姿を消してしまう。彼らは「蒸発者」と呼ばれる。理由は、⼈間関係のトラブル、借⾦、ヤクザからの脅迫など、さまざま。いわゆる「夜逃げ屋」の支援を受ける者もいる。すべてのしがらみを断ち、見知らぬ土地で、新しい生活を始める。深い喪失や挫折と、人生をゼロからやり直す希望が交差する。こうした「蒸発」という現象は、これまでも優れた文学や映画のモチーフになってきた。映画『蒸発』は、⽇本における蒸発の実態に迫ったドキュメンタリーだ。知られざる夜逃げ屋の仕事、そして失踪者と残された⼈々が抱える⼼の葛藤や、和解に至るまでの道のりを、没入感のある映像で描き出す。
本作は、ドイツ人映画作家アンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点に活動する映像作家・森あらたとのコラボレーションから生まれた。ドキュメンタリー映画祭の最高峰の一つ、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭では連日超満員を記録し、ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀作品賞を受賞。さらに40以上もの国際映画祭で注目を集め、ドイツ国内50館以上のアートハウスで上映され「JOHATSU」という言葉を世界に知らしめた。その映画が、ついに撮影地である日本で劇場公開される。
※出演者たちの身元を保護するため、AI技術で一部の顔や声に加工しています
より詳しく知りたい方はこちらをお読みください
日本での劇場公開に際し、本作では出演者たちのプライバシーを保護するため、AI技術を用いて一部の顔や声を加工する「AI ディープフェイク」を採用しています。ドキュメンタリー映画におけるこの技術を用いた例はまだ少なく、その試みも注目を集めています。一方で、一般公開に先立って行われたマスコミ試写会では、「何がディープフェイクなのかわからなかった」「一瞬、ボカシが外れたのかと思った」といった声も聞かれました。そこで、AI ディープフェイクを採用した理由やその技術工程について、アンドレアス・ハートマン監督と森あらた監督によるQ&Aおよびコメントを掲載します。
アンドレアス・ハートマン&森あらた監督とのQ&A
Q.
ドキュメンタリー映画『蒸発』におけるAIディープフェイクの使用目的とは?
A.
出演者のプライバシーを保護し、同時に、彼ら彼女らの微細な表情や感情の変化を記録し伝えるためです。
Q.
具体的な技術工程は?
A.
まず、生成AIに、現実には存在しない架空の人物の顔写真を生成させました。さらにAIディープフェイク技術で、その新しい顔を映像内の取材対象者の顔と融合させ、元の顔の表情の動きを分析し、その動きを完全に新しい顔に模倣させることで、新たな人物像として再構成しました。
Q.
ディープフェイクを導入したことによる成果は?
A.
ドキュメンタリー映画として没入感・臨場感を損なうことなく、登場人物たちの葛藤や内面の機微を表現することができました。
制作が開始された当時、本作は日本国外での公開を想定していました。しかし、リサーチ1年、撮影4年、編集1年という、6年間わたる制作期間中にAI技術が目覚ましい発展を遂げました。そのことによって、撮影地である日本での劇場公開が可能となったのです。
アンドレアス・ハートマン&森あらた監督のコメント
本作の日本公開にあたり、出演者の安全を守る最善の方法として AI ディープフェイクを使用したのは、匿名化しつつも表情は再現できるため、海外版が持つ没入感を保てると考えたからです。 ただし AI の使用は最小限に、重要な心理描写のみに用い、それ以外はぼかし処理をしました。映画はぼかしから始まり、霧が晴れるように蒸発者たちの〈顔〉が徐々に現れます。あえて AI を始めから使わないことで、観客が感情に視覚的に触れる瞬間を大切にしています。また、過度な写実さは避け、わずかに人工的な顔にすることで、観客が一目で AI とわかるようにもしました。ドキュメンタリーにおいて AI の使用はまだ希少ですが、この新技術を必要最低限、不可欠な目的で使うことで、本作がその良い先行例となることを期待しています。
REVIEWS
REVIEWS
圧倒的な没入感
スクリーン・デイリー紙
自ら姿を消した人々をめぐる胸を打つ記録
ザ・ガーディアン紙
社会的な虚無感が奇妙なほど美しく立ち現れる
南ドイツ新聞
日本のダークサイドを露わにするドキュメンタリー
インディペンデント紙
COMMENTS
なんとか見つかってほしいと思う。
なんとか見つからないでほしいと思う。
こう並べると、ものすごく矛盾する2行だが、
観終わった自分の心の中で併存している。
武田砂鉄
(ライター)
「蒸発」とそれをとりまく人々の姿をとおし、この日本において社会とは家族とは何かという大きな問いをもたらす、ざわつく作品。
小林エリカ
(作家・アーティスト)
蒸発って逃げ場なんだなあ。
みんな消えたいんじゃなくて、生きたいんだ。
想田和弘
(映画作家)
本作には、世界各国の人々が、日本の「蒸発」に惹かれる要素が詰まっている。失踪を「蒸発」というどこか他人事のような比喩で表現しつつ、その言葉を使いつくして忘れてしまうほどには失踪を違和感なく受け止めてしまう感性。そこに虚無を感じるか、自由への余白的なものを見出すかは、本作を観るあなたに委ねられている。
中森弘樹
(社会学者/『失踪の社会学 親密性と責任をめぐる試論』著者)
その場から消えなくてはならない人生から、生きる意味を見出すためには、出会いが必要だと思う。他者とも、自分自身とも。それがどんなに不確実であっても。空が、朝に出会っていちにちを運んでくるように。
上田假奈代
(詩人)
新たな活路を模索する登場人物たちの姿には苦境・もどかしさ・葛藤がにじみ、見る者を魅了する。生きるという意味を深く考えさせられ、逃げるという行為が一つの手段であることを認識させられた作品である。
羽鳥翔
(元夜逃げ屋CEO・作家)
国外制作の作品ながら、その視点は日本を外側から消費するものではなく、複数の立場の当事者の内側に向けられている。そこで浮き彫りになるのは、追い込まれた人間に対する安全網の欠如と、過去の痕跡を消して生き直す行為に伴う大きな代償。どこか他人事として見ていた「蒸発」という現象は、我々のすぐ隣に存在するものだとこの映画で知ることになる。
ISO
(ライター)
登場人物の一人、「夜逃げ屋」をやっている女性の蒸発者に向けるまなざしに、私は本当の意味での他者へのやさしさを感じました。ただ、私は彼女のことを、表情はあるがどこかぎこちない作り物の顔を通してしか知りません。本作では身元を保護するために、顔がAIで加工されています。私たちにとって顔とは一体何なのかを考えさせられる、かなり特異な顔の経験でした。
金川晋吾
(写真家)
匿名性を維持しつつ、人間的な生々しさを伝達する。この「善きディープフェイク」の使い方は、顔を出せない人たちの「顔」、声を発することのできない人たちの「声」を可視化し、共感可能性を高めることで、社会の認識を大きく変えていくことになるはずだ。
藤田直哉
(批評家/日本映画大学准教授)
※敬称略・順不同
DIRECTOR PROFILES
アンドレアス・ハートマン
監督/プロデューサー
ベルリンを拠点に活動する映画監督・プロデューサーであり制作会社Ossa Filmの創設者。「コンラート・ヴォルフ」映画・テレビ大学を卒業後、ベルリン芸術大学ではトーマス・アルスラン教授のもと、マイスターシューラーとして学ぶ。これまでに TOKAS、ヴィラ鴨川、DAAD によるミャンマーおよびベトナムでのレジデンスなど、数多くのアーティスト・イン・レジデンスに参加。ベルリナーレ・タレンツおよびサンダンス・インスティチュートの卒業生。ゲルト・ルーゲ助成を受け、ドイツテレビアワードのグリム賞にノミネートされる。監督・プロデュース作品は、ヴェネツィア国際映画祭、釜山国際映画祭、DOKライプツィヒ、フィレンツェポポリ映画祭、シネマ・デュ・レエルなど、世界各地の国際映画祭で上映されている。長編第3作『自由人』は、第22回釜山国際映画祭にて釜山シネフィルアワードを受賞。
メッセージ
10年ほど前、日本滞在中に「蒸発」という現象、そして人生をやり直す手助けをする「夜逃げ屋」の存在を知りました。自らの意思で姿を消すという選択の裏にある、深い喪失感と可能性に強く惹かれました。
外国人である私の視点と、長年日本を離れて暮らしてきた共同監督・森あらた氏の視点が重なり合うことで、日本社会の中ではしばしば見えにくい「隠された世界」への扉が開かれました。本作は、日本特有の社会現象を記録するにとどまらず、人間の心理に迫る普遍的な試みでもあります。私たちはあえてセンセーショナルな表現を避け、人々の声に静かに耳を傾ける姿勢で制作に臨みました。
この作品が、社会的規範、家族や職業といった日本社会の構造について、判断や非難を加えることなく、注意深く、そして敬意をもって考えるきっかけとなることを願っています。
森あらた
監督
ベルリンと東京を拠点に活動する映画監督・映像編集者・アーティスト。ドキュメンタリー映画、テレビドキュメンタリー、ダンス・シアター、建築など、その活動は多岐にわたる。学習院大学日本文学日本語学科、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ美術大学ファインアート科を卒業。映画界の巨匠ヴィム・ヴェンダース自らが選び、新進気鋭の若手映像作家に贈られるヴィム・ヴェンダース奨学金を受賞。またアジアン・カルチュラル・カウンシル個人フェローシップを受ける。2021年には、中国の新シルクロード沿いの都市を舞台にした架空の映像旅行記、実験的ドキュメンタリー作品『ア・ミリオン』が、第64回 DOK ライプツィヒでワールドプレミア上映。建築写真家ラウリアン・ギニトイウとともに“another:”を共同設立、BIG、OMA、SO-IL、塩田千春ら著名建築家、アーティスト達と映像を通してコラボレーションを行う。ヴェネツィア建築ビエンナーレにも作品を出展。またディレクターとして、イランなど危険地帯に赴きNHKスペシャルの難民・運び屋取材を敢行。WOWOWとIPCの共同プロジェクト、パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」では、国際エミー賞にノーミネートされる。
メッセージ
人生の半分を欧州で暮らしてきた私にとって、生まれ育った日本は半ば遠い国でした。しかし本作を通じ、この国の新たな側面、そして日本人としての自分自身を再発見することができました。
「蒸発」は広く知られながらも、日本社会の暗黙のタブーです。制作を通して驚かされたのは、この言葉にまつわる個人的な物語を、一見普通の人々が誰もが一つは抱えているという事実でした。本作では、複雑で周縁的でありながら同時にどこにでも存在する、目に見えないブラックホールのような世界を描いています。そこで私たちが気づいたのは、蒸発者が新たな地で探しているのは、自由や安全だけでなく「自分自身」だということです。
世界各地で上映されてきた本作が、ついに日本で配給されることを光栄に思います。この記録が、皆さんの心に秘めた物語とどこかで重なることを願っています。
ドキュメンタリー映画『蒸発』から見える日本社会の隙間と救い──監督のアンドレアス・ハートマンと森あらたインタビュー
年間9万人が失踪する日本…映画『蒸発』の監督が見た「夜逃げ屋がビジネスとして成立する国」の現実
横浜シネマリン:14:15-15:41 (86分)
⽇本では毎年約8万⼈が失踪し
そのうち数千⼈が完全に消えるーー
⽇本では毎年、約8万⼈が失踪する。その多くはやがて帰宅するが、数千⼈は完全に姿を消してしまう。彼らは「蒸発者」と呼ばれる。理由は、⼈間関係のトラブル、借⾦、ヤクザからの脅迫など、さまざま。いわゆる「夜逃げ屋」の⽀援を受ける者もいる。すべてのしがらみを断ち、⾒知らぬ⼟地で、新しい⽣活を始める。深い喪失や挫折と、⼈⽣をゼロからやり直す希望が交差する。こうした「蒸発」という現象は、これまでも優れた⽂学や映画のモチーフになってきた。映画『蒸発』は、⽇本における蒸発の実態に迫ったドキュメンタリーだ。知られざる夜逃げ屋の仕事、そして失踪者と残された⼈々が抱える⼼の葛藤や、和解に⾄るまでの道のりを、没⼊感のある映像で描き出す。
本作は、ドイツ⼈映画作家アンドレアス・ハートマンと、ベルリンと東京を拠点に活動する映像作家・森あらたとのコラボレーションから⽣まれた。ドキュメンタリー映画祭の最⾼峰の⼀つ、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭では連⽇超満員を記録し、ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭では最優秀作品賞を受賞。さらに40以上もの国際映画祭で注⽬を集め、ドイツ国内50館以上のアートハウスで上映され話題となった。そして今、その映画が、ついに撮影地である⽇本で劇場公開される。
なお、本作では、出演者たちの⾝元を保護する⽬的で、AI 技術を⽤い⼀部の顔や声に加⼯を施している。
人はなぜ失踪するのか? タブーに迫るドキュメンタリー「蒸発」3月14日より日本公開決定